「わかる」「できる」本気でお客様とつながりたい人のマーケティング実践メディア

ソーシャルリスニングから広告まで データ分析の達人が語るこれからのデジタルマーケティング

ソーシャルリスニングツールの特徴とポイント

花崎 昨日受講者の中にも読者の中にも、これからソーシャルリスニングについて、まずはツイッター傾聴あたりからでも自社でがんばってやってみようとお考えの方もいらっしゃるでしょうし、泉さんのようなプロフェッショナルにそこはおまかせしつつ、やることを決め、実践するところに経営資源を集中してやっていきたいという方もいらっしゃると思います。まず自社でやるという場合のステップとしてツール選びがあります。確か泉さん複数使われているということで、やっぱり違いみたいなものってあるんですか?

 そうですね。うちは商売柄、複数のツールを常に検証して、あるツールでとれるデータと別のツールでとれるデータの切り口の違いをみていくということはやっています。また、クライアントにどっちがいいか聞かれたときにある程度のことが言えなきゃいけない面もあるので使ってるっていうところもありますね。

一般的な企業が、常にそういうことをやる必要はあるかというと、そこは違うところもあると思いますけど、確かにツールによって違いますよね。そのデータの取り方一つにしても、例えばツイッター分析の場合、ツイートを基本的には全量取ってくるツールもあれば、ツイートはものすごいボリュームがあるので、その中の何十パーセントかをとってきてサンプル的な調査をかけるっていうのもあります。それによってどういう違いがでてくるのか。多分全量取ってくる場合は、データ量が多い分、気軽にある期間過去にさかのぼって分析するような場合は難しい。一方で、採れたデータは全量だから信頼性がある。このように一長一短ありますよね。

花崎 これも目的用途に応じたツール選びが重要なんでしょうね。
リスニングツールにも特徴によるタイプ分類ってあるんですか?

 どれもそれほど大きくは変わらないですかね。

花崎 プロとしてみれば、かゆい所に手が届く微妙な違いですか。

 そうですね。採り方とかフィルターのかけかたとか、あとは先ほど言ったような、スパム的な書き込みをどのレベルで除去するかとかいうあたりは、それぞれ違いもあります。今はまだ改良、アップデートが進んでいる段階ですから、半年前と今を比較すると同じツールでもできることが全く違ってきていますね。

花崎 多分その国産のツールと海外のツールで、国内マーケットで日本を中心としてやるのか、海外も含めてそのクチコミを知りたいのかっていうことでいえば、ツールの選び方っていうのは変わってくるとこっていうのはありますでしょうね。

株式会社ルグラン共同CEO 泉 浩人氏 そうですね。Kloutとかツイッターカウンターみたいな、単に数字を追うものであれば、ある程度それは別にグローバルなもので構わないですよね。一方でクチコミ解析みたいな、言語を扱うものになると、やっぱり難しいですよね。日本語のハンドリングとかっていうものができないと意味をなさない。

花崎 形態素解析みたいなやつですよね。「飲みたくないわけでもない」といった複雑な日本語の解析。

 そうですね。「飲みたくないというとウソになる」とか(笑)。

花崎 それを判断しないといけないから難しい。日本語については日本人のチカラでなんとかしないと。

 基本的にクチコミ解析のあの部分はやはり国産系の独壇場じゃないですか。よく今話題になるのはツイッターの検索。あれがなかなか目的のものを引っ張ってこれないのは、まだまだツイッター自身が搭載している検索エンジンが、グーグルなどの検索エンジンに比べて日本語のハンドリングが弱いからかもしれません。これは特に形態素解析に負うところが大きいと思うんですよね。

去年のアドテックでアユダンテの安川さんにソーシャル検索の話をして頂いた時に、今ツイッター検索でひっかかりやすくするためには、書き手が対策を講じる必要があるという話がでました。このワードで検索してほしいなと思ったら、スペースを入れるとか。

花崎 ほう!

 検索エンジン側が言葉をどこで切ればいいか判断できないから。二つのワード、たとえば「福山ランチ」というときには、あえて、スペースを入れてあげて「福山 ランチ」とすれば検索に出やすくなる。逆にくっつけちゃうと、うまくそこが判断できないことがあるよ、といった話。

花崎 それはあるかもしれませんね。

一方でマーケターのもう一つのやり方、つまり泉さんのようなプロの方をうまく利用しながら、自分たちが実践すべき所に注力する、というやり方もあります。そこで、腕のいい事業者を選ぶときのポイントはありますか?「見抜き方」みたいな。

 特にウェブ系の話のときに、まだまだできていないケースが多いのが、いわゆるRFP(見積もり依頼書)です。これを出してくるケースは日本では非常に少ない。RFPに書くべきことがノウハウとして出てるくらい大切にもかかわらず。

よくあるのが「RFPはないけど、これはコンペです」みたいな展開。これでは何をもってコンペをするのかが明確でない中で、ただ単に複数の代理店を呼んで来て、何となく話を聞いてどこがいいかを決めてしまいかねない。非常に感覚的な議論になっちゃうんですよね。

RFPを出すためには、当たり前なんですけど、自社の目的がはっきりしていないといけないんです。リスティング広告やアクセス解析を外注するときに、なぜ外注したいのか。社内的に管理運用のリソースがないから外に出すという話なのか。いや中にも人がいるんだけど、知見がないから出すのか。あるいはただ単純に自社でやった時との効果の違いを見たいのか、あるいは自社で運用したものの、なかなか期待するような費用対効果が実現できないからプロに出したいのか。とにかくいろんなケースがあるわけです。それによって、重視すべき項目が明確になる。コストを下げたいという話なのか、いやコストはいいんだけど、とにかくこの費用対効果が実現したいのか、みたいなことですよね。

パートナー選びのための的確な判断軸を持つために、まずはRFPを出すと。そして出す時には、自分たちの目的をはっきりさせること。でないと効果的なRFPを出せないと思います。
もうひとつ、一番簡単なのが、分析であれば過去のレポートを見せてくれっていうのが一番早いですよね。

花崎 コスト削減したいとか手間を省きたいといった目的もあるとは思うんですけど、目的は何であれ、おそらくパートナーを選ぶ時にスキルは低いより高いに越したことはないわけですよね。分析力を見抜くところで、過去のレポートを、どこのものかわからないという形にして見せていただくというのは一つの効果的な解のように思います。

 発注者側が、いま一つ外注の目的や選考基準を絞りきれてない状態で、業者に会っているケースが、私の個人的な経験から言うと多いのかなと思いますね。うちにお問い合わせを頂いているんだけれども、何を期待されているかこちらもよく分からない状態で話をしているので、選ばれたにしても選ばれなかったにしても、何を基準に選ぼうとしてるのかよくわからないっていうケースは結構あります。ここが一番大きいと思いますよ。

花崎 やはり目的なんですよね。ここも。