ソーシャルメディア分析におけるコストパーエンゲージメントの意味
花崎 分析という切り口でもやることはいろいろありますね。
ソーシャルメディアの領域においても分析は不可欠だと思うんですけど、ソーシャルメディア分析の話は、結構出たんですか?
泉 それこそコーシックさんのお話でも出ていました。ここもトライアンドエラーが必要な領域なんですよね。例えばフェイスブックに関して言えば、フェイスブック広告をやるとお金がかかるわけじゃないですか。
じゃあフェイスブック広告のROIをどう評価するのか。これもまあ確立していないっていうよりは、正解は一つではないという考え方ですよね。
花崎 全体の中での位置づけ次第ですよね。
泉 例えば、いいね!をとるじゃないですか。これも単に割り算すれば何でも出るわけで。いいね!の一件がエンゲージメントだという考え方のもとに、コストパーエンゲージメントっていう考え方はできるわけですよね。
例えば昨日ちょっとお話ししたツイッターの有料のツイートみたいなやつも、一件RTされたとか一件フォロワーが増えたということに対して、フォロワーが増えたことをエンゲージメントとみなして、コストをそれで割ればコストパーエンゲージメントっていうのは出るわけですよね。出すのは簡単なんですが、難しいのはその意味ですよね。フォロワーが一件増えることの意味、いいね!が一件増えることの意味、RTが一個増えることの意味。
これは会社によっても違ってくる。企業のフェイスブックページも、いわばアーンドメディアの中に設けられた、出城という位置付けですよね。アーンドメディアの中に設けられたオウンドメディアみたいな。
一方で完全にいわゆるキャンペーンを展開する場所みたいな使い方をしているケースもあるじゃないですか。特に大手のコカコーラとか、ああいうところっていうのは、もちろんその自分の出城でもあるんだけど、決してあそこはコーポレートサイト的に使われているかっていうとそうでもない場合もある。
あるいはアメリカのスターバックスアイデア。あれもまさに消費者から新しいアイデアを募るという、対話目的に限定してインタラクションの場として活用している。そのブランドに対して単純にいいね!を言ってもらう場合と、ある特定の目的でインタラクションする場合でも全く違いますよね。
すると前者と後者では、いいね!の意味合いも違えば価値も違う。こんな時にどうするかというと、結局一つの答えはなくてトライアンドエラーでしょうと。「あるキャンペーンやっていいね!が何万とか何十万集まった。じゃあ最終的にそれによって売り上げどうなったの?」とか、あるいはもっとこういわゆる間接的なブランドの認知とか、「ブランドに対するその好感度みたいなものが高まったのか?」みたいなことを、総合的に検証していく必要がありますよね。
花崎 ソーシャルメディアの分析って、大きく分けて二つあると私は思っているんです。一つは今おっしゃったようなコンテクスト、つまりその会社のブランド側が、設計するある一種のシナリオの中の分析ですよね。購買なのか、絆づくりとか、いろんなゴールがあると思うんですけど、あるゴールに向けてのシナリオの中でのファンなり、その人々の動きとか、行動、発言といったものを、キャッチし、それらを分析して、意図する行動をとってもらうための戦略の見直しなどを行っていくというもの。
もう一つが、ファネルの外側で語られていることを分析するというもの。昨日の講義でやっていたソーシャルリスニングはこちらですよね。ここが多分グランズウェルの本質だと思うんですけど、自社としてコントロールしようとしているファネル(シナリオ)はあるんですけど、生活者はそれ以外のところで割と好き勝手にいろんなことを語ってますよね。それらをどのように経営活動やファネルの構築に結び付けていくのか。「自社でソーシャルメディアを活用しなくても放っておいても既にあるリソースなんだから使いましょう」っていうのもあるだろうし、いままでの分析と比べて用途の幅が広いと。
だからこそ多目的に使えるっていうところで、企業がこれをどう使うのかというときに、それこそ目的がはっきりしていないとツールが宝の持ち腐れに、という話になってくる面があると思うんです。
これはロンドンの情報でも、実際に泉さんがビジネスとして展開しているところでもいいんですけど、ターゲットインサイトを発掘するとか、商品開発につなげるとか、あるいは書いてある所に直接働きかけるアクティブサポートのようなカスタマーサービスの形で使うとか、いろいろあると思うんですけど、今実際多い企業でのソーシャルメディア分析の使われ方ってどんな感じですか?体感覚としてでもいいんですけど。
泉 どうなんですかねー?特に日本だとなかなかまだアクティブサポートっていうところまで踏み出せているところは、感じからするとあまり多くないのかなーっていう。
花崎 ソフトバンクとかありますけどね。
泉 そこは、孫さんがやりますっていっちゃうから(笑)。
花崎 iphone4S発売の時、孫さんのすごい対応は見ましたけど。あれくらいの覚悟がないとちょっとねー。なかなか難しい面はあるんでしょうけど。
泉 そうですね。アクティブサポートになっていくと、やっぱりマーケティングというよりはまさにクライアントサポートみたいな。そうすると今度は投資っていうのは、マーケティングではなくて、体制に対する投資であったりとかっていうことになってくるので。
花崎 スモールスタートできにくいところかもしれませんね。その辺りはね。
泉 かもしれないですよね。