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次世代ダイレクトマーケティング対談― 新しい時代における「価値」の伝え方




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日本郵便の時代から積み重ねたダイレクトマーケティングの礎

花崎 田中さん、今日はよろしくお願いします。
昨年秋に宣伝会議さんのイマジナクトセミナーにお越しいただいて以来、一緒にお酒を飲ませていただいた回数№1は田中さんなんですよね。

田中 そうなんですか?嬉しいです。

花崎 ここのところ月一回は必ず飲んでましたよね。月一回一緒に飲む人ってなかなかいないと思うんですけど、どうですか?

田中 そう考えたら珍しいですね。

花崎 田中さんの場合、全国飛び回られていて、お忙しいですしね。

読者の中にはすでにご存知の方もいらっしゃると思いますけど、当社もこの時代の変化に合わせて、まず社内スタッフもスキルをあげていこうということで、今年から本格的に田中さんにいろいろお手伝いいただいているんですよね。

田中 もともとスキル高いですけどね、大和広告のみなさんは。

花崎 そうですか。ありがとうございます。さらにスキルをアップデートしていくというところでお力添えいただければ。

世代的にも同世代ということで、非常に波長があうというか、いろいろご相談もしやすいし、気づきも多いので個人的にお会いしていて楽しいですね。今後もよろしくお願いしたいと思います。

田中 こちらこそ。

花崎 私も秋のイマジナクトセミナーで初めて田中先生のセミナーを受講させていただいて、すごく感銘を受けたし、実際に受講者の評価も満足度5点満点中4.79点で、ウチが今までやってきた中でも特に評価が高かった。田中さんはこれまで日本郵便を中心にいくつかの仕事を経験しておられると思うんですけど、まずはその辺りを簡単に自己紹介がてらお話しいただければと思います。

田中 僕は職歴としては本当に日本郵便だけなんですよ。日本郵便の配達員から入って、窓口、営業。ちょうどその時に組織の中で営業マンを動かすために仕組みを作る、郵便局の中では計画課と言うんですけど、人を動かすためにどういう準備が必要かっていう、準備段階の仕事をする期間があったんです。人に動いてもらうためにどんなツールが必要か、どんな準備が必要かを考え、実践するという仕事をずいぶん長くさせていただいた結果、今の販促物を作るのに必要な準備や、会った後のフォローアップなど、点ではなくって線・面で考える癖がついたところがありますね。

花崎 なるほど。たしかご自身で営業活動をされていたときは、トップセールスマンみたいな感じだったんですよね。それはその準備の賜物であったと。

田中 準備も大切なんですけど、何よりも打席数を重視していました。準備に時間を取られるくらいなら一件でも多くお客様のところに行くようにしていました。とにかく打席数が多くなかったら、打率がいくら高くても成果は出ないですし。まずは絶対数を上げると。とにかく経験を積む。

花崎 なるほど。その後に率がついてくると。

田中 むしろ打席数を上げると勝手に率も上がってくる感じがありました。

花崎 営業と準備というもの以外に、今携わっておられるダイレクトマーケティングだとか、組織内のモチベーションアップの仕事もされていたんですかね。

田中 前の職場を悪く言うみたいで嫌なんですけど、もともと郵便局員って公務員じゃないですか。公務員っていうのはもともと安定をもとめて入ってきた人ですから、営業に行けといっても、「なんで行かなあかんの?」と。配達とかの仕事は好きであっても、お客様のところに自分から飛び込んで行くっていう使命感みたいなものはあまり持ち合わせていない人種なんですよ。そういう方々に、お客様サービスというものの大切さを説いて、営業の喜びというものを伝えるのは大変でした。苦労しましたね。

花崎 でもその中でいろんな成果を出せたんじゃないんですか?

田中 それは出せましたね。働いている人達のモチベーションの方向性を探ってあげるっていう部分で。必ずしもお客様にありがとうって言われたら、みんなが嬉しいわけじゃなくって、この人の喜びってなんなんだろうと。極端な話、上司に褒められたほうがお客さんに褒められるより喜ぶ人もいるわけじゃないですか。だったらお客さんを喜ばしたら、上司が喜ぶんだと。何かしらその人の動く理由を探してあげると、結果効果が上がっていく。その辺りは苦慮もしましたけど、やりがいもありましたね。

花崎 なるほど。今でも日本郵便の中には「田中みのるシンパ」と言ってよいかわかりませんけれど、そういう方もいらっしゃるようで。

田中 ありがたいですね。

花崎 そういった方々もモチベーション研修のつながりで接点のあった方々なんですか?

田中 そうですね。大体2000人くらいの方と関わってきたんですけど、その2000人それぞれが大分偉くなってきて、僕の影響を受けて部下にそれを伝えてくれているようです。やめた今も「田中みのるさんっていたんだよ」と言ってくれているみたい。

花崎 伝説の人みたいになっちゃってますね。エバンジェリストが今も日本郵便内にいっぱいいると。

田中 ありがたいです。

花崎 すごいですね。
田中さんは、日本郵便でダイレクトマーケティングにも携わっておられたということで、そこの話もお聞かせください。

田中 小泉元首相が郵政民営化を叫んだ後に、郵便局は民営化の一環として、JP総研というのを作ろうとしたんですよ。実際JPは日本一の配達網を持っていて、日本一ダイレクトメールを届けている会社だったわけです。1日7000万通という圧倒的な物量があるじゃないですか。そこを活かして、封筒的なお客様への販促物は、開封率から体裁から中身からコンサルティングできる組織になるぞということがありまして。僕は実はそこの中枢に入ったんですね。

するとダイレクトメールといわれるメッセージ、ダイレクトレスポンスツールは日本郵便にノウハウも勝てないぞとなりますよね。今、佐川さんやヤマトさんもメールを届けていますけど、内容も郵便屋さんは相談に乗ってくれるぞということになれば、戦いに勝てるんじゃないかと。

そういうわけで、当時JPがつくろうとしたコンサルティング部門に私が在籍していたので、組織として研究する時間を与えてもらえたんです。そのおかげで今の僕があるんですけどね。

花崎 それこそ、大組織のふんだんにある資源を活用して、みっちりと。

田中 みっちりと。北は北海道から南は九州沖縄まで、郵便局って24600ヶ所あるわけじゃないですか。そこがすべて、僕の依頼で、地域に密着した実例を返してくれる。僕は本当にありがたいことに、都心にいながらあらゆる場所の実例を手に入れられたんです。

例えば、人材派遣一つにしても、都市部で人材派遣業をするビジネスと、山間部で人材派遣業をするときには、集客から斡旋する先への売り込みまで違うんですよ。言葉が違ったり、ツールが違ったり。それを僕は両方見ることで、共通点も見えるし、違うところも見える。そういう視点がたくさんあるだけで、県民性とか地域性とかも見えてくるし、同じビジネスであってもアプローチの方向性も見えてくる。業種業態、場所、いろんな軸からたくさんの実例を集められる環境にあったんですね。それが、今自分がやっているコンサルティングの礎になっていますね。

花崎 地域によってやっぱり違うんですか?

田中 違うんですよ。たとえば、こちらの土地が少し倹約気質であるとすると、同じような倹約気質の強い他の地域の成功例をここでも使えるんじゃないかっていう仮説が立てられますよね。